SPring-8 マグネットピン対応SPACE
2010-04-14 : 構造生物学BL Webページの更新情報を追加 by どぶお
このページの情報は参考情報ですので詳細な情報が必要な場合は記事末尾のサイト等を参照して下さい。BL41XUの情報を基にどぶおがレビューしています。
SPring-8では以前より自動サンプル交換ロボットSPACEが稼働していますが、2009年末頃よりHampton rsearch社製等の金属製マグネットピンも利用可能になっています。従来SPACEは専用トレイおよび専用ピンを使用する2-mode運転を想定されており、BL26B1、BL26B2、BL32B2、BL38B1で運用されていましたが、BL41XUに導入するに当たって、一般的なピンでの使用も可能になったようです。
従来の専用ピンではなくマグネットによる脱着のため、2-mode運転は行えませんが、高速に測定できるBL41XUではハッチの扉を開閉することなくサンプルの交換を行えるため、限られたビームタイムを有効に活用することができると期待されます。
- 2010-04-14
- 構造生物学ビームラインWebページ( http://bioxtal.spring8.or.jp/ )に項目が追加されました。
- SPACE使用時のHamptonピンモードのマニュアルを公開 (一部動画あり)
- ビームライン使用時のFAQページを追加
- 課題申請関係の情報を追加
紹介チラシ
スタッフにいただきました 。開発状況により、内容が異なる場合があります。
- PDF版 -- SPACE.pdf
勝手に感想 by どぶお
先日BL41XUを使用する機会があったので、実際にハンプトンピンを使用してロボットによるデータ測定を行ってきました。あくまで私個人の感想ですが、具体的なイメージとして載せておきます。もちろん実際の部分はサンプル等により異なると思いますのでその辺りはご了承下さい。実際に使用する時は担当スタッフと十分に相談の上、実施して下さい。
準備
私たちの研究室からSPring-8まではかなり遠いので、ドライシッパーにサンプルを格納して送付しました。送付方法は通常通りケーンに取り付けて格納です。結晶の数は約30。実験前日までにSPring-8に到着するように宅急便で発送しました。ロボットを使用する際に注意する点は、ピンの高さをそろえる事だそうで(クライオ気流から外れるので)、今回はハンプトンの18mmに一番短いところで折ったピンを接着した物を使用しました。SPring-8、PFともにロボットの場合はこのセッティングがスタンダードだと思います(開発状況により変わる可能性あり)。
実験当日
私たちの前のユーザーさんはロボットを使用していなかったり、ヘリウム冷却を使用していたりしたので調整時間が少し必要になったようです。必要な時間はその時の状況によると思いますが、その時は30分〜1時間程度でした。今後短縮されるものと思われます。
その間に上のチラシの手順でケーンからユニパックというロボット用のトレイにサンプルを移します。慣れてなかったというのもあると思いますが、1トレイ(16個)で40分程度、2トレイ使用して1時間半ぐらいでした(手順説明時間込み)。ビームタイムが始まる少し前から作業を行えばロボットの調整後、すぐにセットして使用可能でしょう。
最後の雑感で述べますが、慣れていないのもあると思いますが、私たちの場合2トレイ(32個)を測定するのに1.5シフト(12時間)では時間的にすこしきつかったかも。
実験中
今回は、全てのサンプルをロボットでマウントしましたが、ピンの高ささえそろえておけば、途中でロボットを使わないマウントも可能なようです。従って、前半は手動マウントをして、別の人がトレイに詰めれば後半からロボットマウントというのも可能でしょう。
スクリーニングとして利用するならハッチの扉の開閉がないということでかなり楽だと感じることができます。マウントの失敗での結晶損傷などは私たちのシフト中では一度も発生しなかったので信頼性という点でも十分ではないかと思います。
雑感
当然ですが、その場で結晶をすくいながらマウントする手順に比べて速いと思います。実際に時間がかかるのは照射位置の決定などの測定条件探索だと思いますが、その辺りを工夫すれば相当な結果が出せそうです。ユーザーの中にはロボット、マニュアル併用で3シフトで100個ほどの結晶をスクリーニング+データ測定したというグループもあるそうなので(考えただけで目眩がしますが・・・)、効率よく使えばかなりのツールになるのではないかと感じました。私たちのグループでは、測定条件の決定で思ったよりも時間を取られてしまったため、1.5シフトで25-30個程度でしたが、この辺りはグループの方針によりかなりの差が出そうです。
BL38B1のように2-mode運転で昼に一気にスクリーニングをして夜間自動測定という夢の測定、今回の41のようにマウント部分の効率化に使用し、測定は通常通り行う、どちらも一長一短あるとは思いますが、ビームラインの特性に合わせて使いこなせれば成果もバリバリ、かも。なお、PFのビームラインでもハンプトンピン対応のユニパックには対応していく(もう対応してる?)ようなのでSPring-8でもユニパックが使えるようになった意義というのは大きいと思います。なお、今後BL38B1でも対応するとのことです。
公式サイト
公式な情報は必ずJASRI構造生物学グループのホームページなどを参照し、詳しい情報の問い合わせなどは各ビームラインスタッフ宛にお願いします。
- JASRI構造生物学グループ -- http://bioxtal.spring8.or.jp/
- 理研構造ゲノムビームライン(BL26B1,B2) -- http://bioxtal.harima.riken.jp/
- SPring-8 -- http://www.spring8.or.jp/
- KEK-PF -- http://pfweis.kek.jp/
参考文献
- SPACE
- Ueno G, Hirose R, Ida K, Kumasaka T, Yamamoto M, "Sample management system for a vast amount of frozen crystals at SPring-8" J Appl. Cryst. 2004 Dec;37(Pt 6):867-873
- BSS
- Ueno G, Kanda H, Kumasaka T, Yamamoto M, "Beamline Scheduling Software: administration software for automatic operation of the RIKEN structural genomics beamlines at SPring-8" J Synchrotron Radiat. 2005 May;12(Pt 3):380-4
- D-Cha
- Okazaki N, Hasegawa K, Ueno G, Murakami H, Kumasaka T, Yamamoto M, "Mail-in data collection at SPring-8 protein crystallography beamlines" J Synchrotron Radiat. 2008; 15:288-291